金属アーク溶接などの作業で発生する溶接ヒュームについて、大きさはどれくらいでどんなリスクがあるかご存知でしょうか?この記事はそういった溶接ヒュームに関する疑問にお答えします。
溶接ヒュームの粒子径(大きさ)は、溶接ヒュームの粒子径は、おおよそ0.1-数μmと言われています(日本溶接協会:Q &Aフォーラムより)。なお、2μm以下の大きさは、鼻の毛や粘膜といったフィルターをくぐり抜ける可能性があることも指摘されており、吸引する可能性がある場合は、防塵マスクなどで対策を講じることが大切です。
国際規格ISO 7708において、粉じんは、吸入した場合の呼吸器への到達の程度に応じて 「吸引性粉じん(インハラブル)」 「咽頭通過性粉じん(ソラシック)」 「吸入性粉じん(レスピラブル)」 の3種類に分類されます(参考資料:「労働環境における粒子状化学物質のばく露管理と測定・分析技術」より)。
粒子が大きなものほど、鼻腔や咽頭で付着するのに対し、小さなものほど肺胞といった呼吸器の深部まで到達するという特徴があり、溶接ヒュームは肺胞まで到達する「レスピラブル粒子」に区分されています。
非常に小さく肺胞まで到達する危険性がある溶接ヒュームですが、実際に吸引した場合、どのような健康被害につながる危険性があるのでしょうか?
溶接ヒュームには、肺がんのリスクがあることから、国際がん研究機構(IARC)は、2017年に溶接ヒュームをグループ1(ヒトに対する発がん性)に分類しました。
溶接ヒュームに含まれるマンガンをばく露にすることにより、神経機能障害が多数報告されています。
韓国では、溶接工が長年の溶接ヒュームばく露によりパーキソン病という神経障害を患ったことが訴訟問題になっており、神経障害と溶接ヒュームの因果関係には一定の相関が認められています。
溶接ヒュームの発がん性と神経障害へのリスクについては、厚生労働省から以下のような資料が出ています。もっと詳しく知りたい方は以下からご覧ください。
溶接ヒュームは非常に微細で吸引すると肺胞まで到達する可能性があり、吸引した場合には肺がんや神経障害につながる恐れがあることをお伝えしましたが、こういったリスクを抑えるにはどうすればよいのでしょうか?
厚生省の資料では、溶接ヒュームを扱う場合、以下の措置が義務付けられております。
・全体換気装置による換気等
・空気中の溶接ヒューム濃度の測定
・換気装置の風量増加等必要な措置呼吸用保護具の使用と選択
・マスクのフィットテストの実施
・特定化学物質作業主任者の選任
・特殊健康診断の実施等
その他の必要な措置詳細はこちらの資料でご覧いただけます。
上記のように溶接ヒュームを扱う場合は特別な措置が必要だとお伝えしましたが、各措置には実施すべき期限が設けられています。もしも期限内に措置が完了しなかった場合、罰則の対象となりますので、早め早めに対策するようにしましょう。
・全体換気の実施
・特殊健康診断の実施
・その他必要な措置
・溶接ヒュームの濃度測定
・換気風量の増加その他必要な措置
・再度の溶接ヒュームの濃度測定
・呼吸用保護具の選択・使用
・特定化学物質作業主任者の選任
・フィットテストの実施
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