塗床(ぬりゆか)工事とは、工場等の床を業務に最適な状態へと強化・改善する専門工事です。床がコンクリートむき出しのままでは、ほこりの発生、薬品による腐食、人や台車の通行による摩耗やひび割れなど、さまざまな問題が発生しがちですが、塗床工事をして、高機能な塗料で床面をコーティングすすれば、これらの問題を根本から解決することができます。
例えば、重量物を扱う現場には衝撃に強い高耐久な床を、水や油で滑りやすい厨房には安全で清掃しやすい床を実現。それぞれの現場に最適な機能を持たせることで、日々の業務効率と安全性の向上に大きく貢献します。
数ある塗床材の中でも、工場や倉庫などで最も広く採用されているのが「エポキシ樹脂塗床材」です。その理由は、優れた基本性能と幅広い対応力にあります。
エポキシ樹脂は、そのバランスの取れた高い性能から、さまざまな現場の要求に応えることができます。
塗膜が非常に硬く、摩擦や衝撃に強いのが最大の特徴です。フォークリフトや台車が頻繁に行き交う工場の床を摩耗から守り、重量物を落とした際の衝撃にも耐え、下地のコンクリートを長期間保護します。
酸やアルカリ、各種油類への耐性が高く、薬品や油がこぼれても床材が劣化しにくい点も魅力です。化学薬品を扱う工場や研究所、自動車整備工場などでも安心して使用できます。
エポキシ樹脂塗床は、下地コンクリートへの接着性が非常に高いため、継ぎ目のない滑らかな床面を形成することが可能です。継ぎ目を無くすことによりコンクリートから発生する粉塵を完全にシャットアウトできれば、ホコリも溜まりにくくなるため、清掃が容易な衛生環境を実現できます。
光沢のある美しい仕上がりは、美観の向上を目的とする塗床にも向いています。また、膜の厚さを調整できるため、コストを抑えた「薄膜仕上げ」から、より高い耐久性を持つ「厚膜仕上げ」まで、予算や用途に応じた施工が可能です。
標準仕様では滑らかな床面ですが、砂状の粒子を混ぜ込んで、濡れた状態でも滑りにくい「防滑仕様」にすることも可能です。拡張性の高さにより、水や油を使う厨房や作業場など、安全性が求められる場所にも柔軟に対応できます。
多くのメリットを持つ一方で、エポキシ樹脂には知っておくべき弱点もあります。
最大のデメリットは、紫外線に弱いことです。太陽光はもちろん、室内の蛍光灯に含まれる紫外線に長期間さらされると、塗膜が黄色く変色する「黄変」という現象が起こります。塗料の性能がすぐに落ちるわけではありませんが、美観を重視する場合、直射日光が恒常的に当たる窓際などへの使用は避けた方が賢明です。
標準的なエポキシ樹脂塗床材は、熱にあまり強くありません。高温になる環境では、塗膜が軟化したり、膨れたりする可能性があるため不向きです。高温の蒸気や熱水で洗浄を行う食品工場や、高温の設備が床の近くにある場合は、専用の「耐熱仕様」の塗床材を選ぶ必要があります。
ウレタン樹脂塗床材の最大の特徴はその「弾力性」です。硬い仕上がりのエポキシ樹脂とは対照的な特徴で、その性質が多くのメリットをもたらしています。
ウレタン樹脂塗床材の持つしなやかさから生み出されるメリットは、主に次の3つです。
下地のひび割れ(クラック)に塗膜が追従して伸びる「クラック追従性」の高さは、ウレタン樹脂塗床材の最大の魅力です。
下地のコンクリートは温度変化などにより収縮すると、細かなひび割れが発生します。塗料が硬いエポキシ樹脂の場合、この動きに対応することができないため、表面にまでひび割れが現れることになります。
しかし、塗料がしなやかなウレタン樹脂の場合、下地の動きに合わせて柔軟に伸び縮みするため、塗膜表面のひび割れやそこからの剥がれを防ぐことができ、美しい床面を長期間維持することが可能です。
物を落とした際の衝撃を吸収する力に優れています。硬いエポキシ樹脂と比べると、床材そのものが欠けにくく、下地を衝撃から守る力も高いと言ってよいでしょう。
また、歩行感が非常に柔らかいため、足への負担軽減も期待できます。長時間の立ち仕事や歩行が多い場所への使用に向いている塗料です。
ウレタン樹脂は紫外線による変色や劣化が少ない「耐候性」に優れています。そのため、エポキシ樹脂が苦手とする屋外や、直射日光が当たる場所でも使用することが可能です。ただし、製品によって耐候性のレベルは異なります。
エポキシ樹脂の場合と同様、ウレタン樹脂にも以下のようなデメリットがあります。
一般的に、材料費はエポキシ樹脂に比べて高くなります。また、性能を最大限に発揮させるには、丁寧な下地処理が不可欠です。この処理が不十分だと、塗膜の密着性が損なわれ、かえって剥がれやすくなるため、エポキシ樹脂よりも施工の難易度はやや高いと言えます。
ウレタン樹脂は、施工中の湿度管理が非常に重要です。特に、高湿度の環境下では、塗料が硬化する過程で細かな泡が発生しやすく、仕上がりの品質や耐久性に影響を与える可能性があります。
特に、湿度の高い梅雨の時期や夏場の施工には、空調管理や施工時間の調整など、専門的な知識と細心の注意が必要です。
「塗床工事をしたいけれど、どの塗料を選べばいいか分からない…」といったお悩みは、多くの工場が共通で抱えている問題です。塗床材の種類は多く、床の用途や環境に合わないものを選ぶと、「すぐに剥がれてしまった」「傷だらけになった」などといった失敗に繋がりかねません。
ここでは、最適な塗床材を選ぶために、最低限おさえておきたい3つのポイントを分かりやすく解説します。
まず一番に考えるべきは、その床が「何に耐える必要があるか」です。モノの落下に耐える「硬さ」が必要なのか、薬品や油、熱水に耐える「特殊な耐性」が必要なのかといった点をよく考えましょう。
次に、床が置かれる「環境」を考えます。屋内か屋外か、ひび割れ(クラック)の心配はないかなどがチェックすべきポイントです。
最後に、滑りにくさは必要かなど、その他の要望や優先順位を整理します。
今回ご紹介したポイントを参考に、専門業者に「どのようなことで困っているか」「どのような床にしたいか」を具体的に伝えることが、失敗しない塗床材選びへの一番の近道です。
静岡スマートファクトリー.comを運営する富士酸素工業株式会社では、静岡県を中心に工場のさまざまな問題についてご相談を承っています。今回ご紹介しました塗床工事以外にも、工場修繕に関連することなら対象です。
静岡県内の工場のことで何かお困りなら、是非一度静岡スマートファクトリー.comを運営する富士酸素工業株式会社まで、お気軽にお問合せください。