重量のある荷物を運搬するために使用する大型なホイストクレーンは、ほんの小さな気のゆるみや点検不足などで事故が発生してしまいます。今回のコラムでは、ホイストクレーンによる作業における危険要因を発見し、事故を予防するために事故の事例や要因について紹介していきます。
ホイストクレーンとは、ロープやチェーンの巻き上げ装置として電気ホイストを用いたクレーンのことです。重量のある荷物を円滑に運搬することを目的に、主に工場や建設現場などで使用されています。
ロープやチェーンを巻き付けたホイールによって荷物の昇降を行う装置であるホイストと、動力によって荷物を吊り上げて水平運搬を行う装置であるクレーンを組み合わせたものがホイストクレーンです。
危険予知とは、職場や作業の状況の中に潜む危険要因を予知、予測することをいいます。ホイストクレーンにはどのような危険要因があるのか、事故事例とその要因から知り、事故を予防する対策をしていきましょう。
ホイストクレーンを使用する現場で起こる事故には、主に「挟まれ事故」「落下事故」「墜落事故」の3つがあります。それぞれの内容を確認していきます。
挟まれ事故とは、ホイストクレーンで移動させている途中のつり荷と壁の間に作業員が挟まれたり、つり荷が転倒して作業員が挟まれたりする事故のことです。天井クレーンを誤って逆に操作してしまい、つり荷と壁に挟まれるケースなどがあります。
落下事故とは、荷物を吊るワイヤーロープが切れてしまう、ホイストクレーンのフックが破損する、クレーン本体部や巻上げ装置の落下などにより、作業員がつり荷の下敷きになってしまう事故のことです。
つり荷の近くや下に作業者がいたり、フックに荷物を掛けたり外したりする玉掛け技能が未熟な作業員が玉掛けを行ったり、作業前点検を怠って損傷したワイヤーロープ使用したりすることで発生します。
墜落事故とは、ホイストクレーンがスムーズに動くためにフックを吊ったトロリが通る道であるクレーンガーダの点検中に作業員が墜落したり、つり荷や天井走行クレーン押されて作業員が作業場から墜落したりする事故のことです。
墜落防止措置や安全管理体制が不十分であることや、クレーンの知識が十分でない作業員がクレーンの動きや特性をしっかりと把握していないまま点検作業を行うことで発生します。
ホイストクレーンを使用する現場で事故が起こる原因は人的要因(ヒューマンエラー)と設備的要因の2つに分類できます。
ヒューマンエラーは、作業員自身の思い込みや危険感覚の欠如といった、作業員本人に要因があるケースと、クレーン作業員と玉掛け作業員のコミュニケーション不足によるものなど、一人ではなく複数人に要因があるケースもあります。
慣れた作業だからといった気のゆるみによる安全帯の未着用や、疲れや焦りによる注意力低下など、ヒューマンエラーが起こる要因はさまざまです。
ヒューマンエラーによる事故を防ぐには、業務開始前に相互の注意喚起や、危険予知活動をするといった、作業員ひとりひとりの安全意識を高く保つ取り組みが必須です。
損傷したワイヤーロープの使用や、ブレーキの摩耗、巻過防止装置の故障によるつり荷の落下などは、事故の原因が設備にあります。設備的要因による事故は、作業開始前や月に一度、年に一度のペースで行う定期点検で予防できます。
現場での事故を予防するには、安全対策の徹底と、定期的な点検の実施が重要です。
安全対策は作業員の意識や現場でのルール徹底から始まります。つり荷の下には入らない、お互いに声を掛け合うなどに加え、無資格者がクレーンの操作を行わない、玉掛け技能講習を修了した人でないと玉掛けを行わないなど当たり前のことを当たり前に徹底することが重要です。
ホイストクレーンには日々の作業前点検に加え、月次点検と年次点検が義務付けられています。定期的なメンテナンスを行えば部品の摩耗や不具合に対して、早めに対処できます。
定期的にメンテナンスを実施することは、安全上必須のことです。しかし、日々ホイストクレーンを稼働させている中、通常業務の合間を縫って徹底的な点検を行うことは簡単ではありません。法令に基づいた点検を確実に行うためにも、外部の専門業者に点検を依頼することも検討してみてください。
静岡スマートファクトリー.comを運営する富士酸素工業株式会社では、静岡県を中心に工場の様々な問題についてご相談を承っています。今回ご紹介しましたホイストクレーン以外にも、工場関連機器のお悩みもお伺いいたします。静岡県内の工場のことで何かお困りなら、是非一度静岡スマートファクトリー.comを運営する富士酸素工業株式会社まで、お気軽にご相談ください。