
工場や倉庫の物流に欠かせないホイストクレーン。その安定した走行を支えているのが「ホイストレール」です。このレールのわずかな「たわみ」が、クレーンの性能を低下させるだけでなく、思わぬ事故の原因となる可能性があります。
今回は、ホイストレールのたわみの原因と、それによって引き起こされる具体的なリスクについて詳しく解説します。
ホイストクレーンとは、荷物を上下させる「ホイスト」と、それを水平に運搬する「クレーン」を組み合わせた装置の総称です。特に、工場の天井に設置されたガーダ上をホイストが左右に移動するタイプは「天井クレーン」と呼ばれ、日本の製造現場で広く活用されています。
このホイストが左右に移動するための軌道が「ホイストレール」です。多くの場合、ガーダの下部(下フランジ)がレールの役割を兼ねており、ホイストの円滑な走行とクレーン全体の安全性を支える非常に重要な部分です。
ホイストレールの「たわみ」とは、荷物の重みや長年の使用によって、レールが弓なりに変形してしまう現象のことです。安全な走行を妨げるこのたわみは、主に以下のような原因で発生します。
定められた定格荷重を超える荷物を吊り上げることは、レールのたわみを引き起こす最も大きな原因です。設計想定以上の荷重がレールに直接かかることで、レールが変形し、元に戻らなくなってしまうことがあります。
荷物を急激に吊り上げたり、急停止したり、あるいは荷物を斜めに引っ張る「斜め吊り」を行ったりすると、レールの一点に瞬間的に大きな力が加わります。このような衝撃の繰り返しが、レールのたわみや歪みを引き起こします。
長年の使用による金属疲労の蓄積はもちろん、ホイストの車輪がレール上を繰り返し走行することで、接触面が摩耗します。レールの断面がすり減ると強度が低下し、たわみやすくなります。
レールの継ぎ目に段差がある、レールを固定するボルトが緩んでいる、レールの支持間隔が不適切であるといった、設置時の施工不良が原因でたわみが発生することもあります。
ホイストレールのたわみを軽視して放置すると、作業効率の低下に留まらず、次のような重大なリスクにつながる可能性があります。
レールがたわむと、ホイストがスムーズに走行できなくなり、「ガタガタ」「キーキー」といった異音や異常な振動が発生します。
走行抵抗が増えることで、ホイストの車輪や、車輪を駆動させるモーター、ギアといった部品に過剰な負担がかかります。これにより部品の摩耗が急速に進めば、予期せぬ故障や寿命の短縮につながりかねません。
レールが谷のようにたわんでいると、作業者が操作していないにもかかわらず、ホイストがたわみの中心に向かって勝手に動いてしまう「自走」という現象が起こります。これでは荷物の正確な位置決めができず、作業効率が著しく低下します。
たわみが限界を超えたり、レールの継ぎ目が開いたりすると、ホイストの車輪がレールから外れる「脱輪」を引き起こす危険性があります。最悪の場合、ホイスト本体や吊り荷が落下するような人命に関わる重大事故につながるかもしれません。
いかがでしたか。今回はホイストレールのゆがみが発生する原因と、ゆがみを放置することによって引き起こされるリスクについて解説しました。
ホイストクレーンを安全に運用するためには、労働安全衛生法で定められた定期点検(年次・月次・日常)が義務付けられています。これらの法定点検を確実に実施し、安全な職場環境を維持するため、専門家によるメンテナンスが重要です。
静岡スマートファクトリー.comを運営する富士酸素工業株式会社では、静岡県を中心に工場の様々な問題についてご相談を承っております。ホイストクレーンの法定点検・修理はもちろん、その他あらゆる工場関連機器にも対応いたしますので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。