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脱炭素化を目指す企業がぜひ加盟したいと言われるRE100とは一体どういったものなのか?また中小企業には不向きと言われる理由とは?詳しく解説します。
RE100は、ビジネスにおける再生可能エネルギーの利用を推進するための国際的なイニシアチブ(企業の連合体)です。
世界中の企業がRE100に加盟し、再生可能エネルギーシフトを目指すことで、地球温暖化問題を解決につながることが期待されています。
国内の大企業が続々と加盟するRE100ですが、参加すると以下のようなメリットが得られます。
RE100に加盟するメリットの中でも、最もインパクトがあるのが投資家から資金調達がしやすくなるという点です。
近年は、投資家が企業を評価する際に「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治)」 という3つの指標を重視する傾向があります。
RE100への加盟は、とりわけ「Environment(環境)」の指標で健全性をアピールすることができるので、投資を呼び込む一助になります。
RE100に加盟して活動することで得られるメリットの3つ目が、再生可能エネルギーシフトを通じてエネルギーの調達コストを下げられるという点です。
再生可能エネルギーの発電コストは高いと思われがちですが、実は、kwhあたりのコストは石炭火力など変わらないレベルまで下がってきています。
2030年になれば太陽光発電はkwhあたりの発電コストが最も低いエネルギーになる可能性があると試算されており、コストを削減する一助になります。
発電方法 | 2020年 発電コスト | 2030年 発電コスト |
石炭火力 | 12.5円 | 13.6~22.4円 |
LNG火力 | 10.7円 | 10.7~14.3円 |
原子力 | 11.5円 | 10.7~14.3円 |
太陽光(事業用) | 12.9円 | 11.7円~ |
陸上風力 | 19.8円 | 8.2~11.8円 |
洋上風力 | 30.0円 | 25.9円 |
出典:資源エネルギー庁ウェブサイト「資源エネルギー庁電気をつくるには、どんなコストがかかる?」
RE100への加盟を通じて、環境保護に貢献できるという点もメリットの一つです。
再生可能エネルギーは、石油などの化石燃料に比べてCO2の排出量が少ないため、地球温暖化の問題解決に貢献することができます。
RE100への加盟によって、環境に配慮した企業であることがアピールできるようになります。
世界的コンサルティングファームであるベイン・アンド・カンパニーの調査によると、日本の消費者の約8割※がプレミアム価格を支払ってもサスティナブルな製品に対し購入意欲を見せており、環境に配慮していることが差別化ポイントとして機能していることがうかがえます。
※MarkeZine 「日本の消費者の約8割がサステイナブル製品への購買意欲が高い ただし実購買へは至らず【ベイン調査】」より
RE100への加盟し、再生可能エネルギーへシフトすることで、化石燃料の価格高騰リスクに備えられるといのもメリットの一つです。
かねてから、化石燃料は枯渇が予測されており、今後、資源が減れば減るほど価格が高騰する可能性があります。
また、化石燃料由来のエネルギーは、ウクライナ・ロシア問題のように資源国との間で問題が発生した場合も急激な価格変動が起こえます。
国内産の再生可能エネルギーに100%シフトすることができれば、化石燃料の価格高騰リスクを軽減、あるいは回避することが可能です。
数多くのメリットがある一方で、RE100に加盟することにはデメリットもあります。具体的には以下のようなものが挙げられます。
RE100に加盟し、再生可能エネルギーシフトをするとなると短期的にはコストの負担が大きくなります。
現状では、再生可能エネルギーは、化石燃料に比べてコストが高いため、それだけ経営を圧迫することとなります。
RE100に加盟することで得られるメリットとして、資金調達のしやすさやイメージ向上による売上アップなどが期待できると紹介しましたが、目標達成できなかった場合、それが翻って企業にダメージを与えることとなります。
そのため、無理のない計画を立て、堅実に目標達成を目指していくのが重要です。
RE100には、何年までに100%再生可能エネルギー化を目指さなければならないという取り決めはありませんが、遅くとも2050年までに100%を達成することが推奨されています。
ただし、目標の達成期限をいつにするかは各企業に委ねられているため、企業によっては2030年や2040年と前倒しでの目標達成を掲げている企業もあります。
RE100は、目標が未達成だったとしてもペナルティを受けることはありません。
現状、RE100は努力目標であり、法的拘束力がない状態です。
だからといって、目標を達成しなくてもよいかというとそうではありません。
先述したように、目標達成できなかった場合には、投資家や消費者の期待を裏切ることとなるので、企業経営にマイナスな影響が出ることが予想されます。
RE100に加盟するには、次のステップを踏む必要があります。
RE100は世界で影響力が大きい大企業を対象としているため、以下の何れかを1つ以上満たす必要があるなどの条件を設定しています。
RE100の加盟条件に「世界または国内で認知度や信頼度が高いなど影響力の大きい企業であること」や「電力消費量が100GWh(日本は50GWh)以上あること」という制約があり、中小企業の多くはこの条件を満たすことができません。
中小企業が再生可能エネルギーシフトをアピールするのであれば、他のイニシアチブへの加盟を検討するのがおすすめです。
RE100への加盟が難しい中小企業が、再生可能エネルギーシフトをアピールするのであれば、「再エネ100宣言 RE Action(アールイー アクション)」がおすすめです。
再エネ100宣言 RE Actionとは、企業、自治体、教育機関、医療機関等の団体によって構成される連合体で、使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示すものです。
RE100との最大の違いは使用電力量に関わらず、加盟ができるという点です。
参加条件は、以下の3点になります。
①2050年までに使用電力を再エネ100%にすることを目標設定し、公表すること
②再エネ推進に関する政策エンゲージメントの実施をすること
③消費電力、再エネ達成率などを毎年報告すること
以上がRE100の解説となります。最後に振り返りの意味を込めて、この記事の要点をまとめておきます。
RE100の加盟には数多くのメリットがある一方、目標達成ができなかった場合は、それらのメリットがひっくり返る可能性があります。
とはいえ、脱炭素化の進行は止まりません。
RE100はそんな大きな流れを味方につける武器となります。
経営を圧迫しないよう無理なく脱炭素化を実行していけるような計画を立てるようにしましょう。