中小企業のための低コスト防災計画:家庭用品で備える

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企業の防災対策は努力義務ですが、罰則を伴わない努力義務ということで、優先順位の低い項目として扱っている企業が少なくありません。しかし、労働契約法や労働安全衛生法には、従業員の安全配慮義務についての記載がありますし、自治体によっては条例で義務化されている場合もあります。そのため、企業が適切な防災対策をすることは必須です。そこで、本記事では、中小企業でも取り組みやすい、家庭用品を用いた低コストで実現できる災害対策について解説します。
企業で災害備蓄が必要な理由
災害が発生したら、企業はまず従業員の安全を確保する必要があります。交通インフラが停止するような災害であれば、直後に従業員を帰宅させるのは危険です。場合によっては、数日間、事業所が従業員の避難場所や待機場所になる可能性があります。
災害によって事業活動がストップしたときには、できるだけ早く再開させ、経済的損失を最低限に抑える努力をしなければなりません。そのためには、従業員の力も借りる必要があります。企業がその責任を果たすためには、従業員が数日間滞在できるような災害備蓄が必要なのです。
中小企業が直面している防災の課題
中小企業の防災対策はあまり進んでいません。実際に防災対策できているのは、特に防災意識が高い一部企業にとどまっています。しかし、防災対策を不要だと考えているからではないようです。中小企業には、防災対策を妨げる以下のような課題があります。
災害備蓄にコストをかけられない
従業員が事業所に滞在するために必要なものは種類が多く、企業がすべて揃えようとすると大きなコストがかかります。金銭的余裕がない中小企業にとって、災害備蓄のための費用を捻出すること自体が課題です。特に、何から揃えるべきか優先順位がよく分かっていない場合は、いくら必要になるか予算を立てることもできないため、災害備蓄に手を付けられません。
大量の備蓄品を保管できる場所がない
防災備蓄品の必要量は3日分が目安です。従業員の人数分揃えるとなると、人数の少ない企業でもかなりの量になります。しかも、それらを災害が発生するまで置いておく必要があるのですが、災害はいつ発生するかわかりません。いつ使うかわからないもののために限られたスペースを割く余裕がない企業が多いことも、中小企業で災害備蓄が進んでいない原因の1つです。

中小企業の防災対策:何からすればいい?
中小企業の場合、コストをできるだけ抑えて防災対策をしなければなりません。そのためには、従業員の協力も必要です。まずは、従業員の防災意識を高め、就業中に災害が発生したときに協力してもらえる体制づくりをしましょう。従業員が就業中の災害が発生することを想定しておらず、防災を会社に丸投げしている状態では、協力を得られにくいからです。
まず、就業中に災害が発生したときには、すぐに帰宅するのは難しいことを理解してもらいます。従業員自身の安全確保だけでなく、事業を継続させるために事業所に残って作業してもらう可能性もあるので、事前に理解してもらっておくことはとても重要です。
次に、備蓄の役割分担をしましょう。事業所に置いておく個人の持ち出し袋を作ってもらうことで、災害備蓄のコストを抑えることが可能になります。最低限の食料備蓄は企業でも行う必要はありますが、全員の嗜好やアレルギーまで考慮することはできません。せっかく準備しても食べられない従業員がいたのでは、企業も従業員本人も困ります。
薬や衛生用品も人によって必要なものが異なるので、こだわりがある人には自分で準備してもらっておく方がよいでしょう。個々である程度準備してもらうことで、企業が準備する量を最低限に抑えることができます。
備蓄品に関しては、定期的な期限の確認と入れ替えが必要です。その際、個々で準備した分に関しては、従業員自身に確認して入れ替えてもらいます。そうすることで、危険確認と入れ替えにかかる手間や時間も費用も最低限に抑えることが可能です。
他にも、ハザードマップの確認や防災マニュアルの作成、訓練の実施、オフィス機器・オフィス家具の固定など、企業が行わなければならない防災対策はたくさんあります。

防災対策におすすめの家庭用品
普段から使い慣れている家庭用品の中には、防災グッズとして備蓄しておくと便利なものもあります。特におすすめなのは食品用ラップ、アルミホイル、ポリ袋、粘着テープ、新聞紙です。これらは、工夫次第で何通りにも使えます。特に、食品用ラップ、アルミホイル、新聞紙は防寒対策に役立ちますし、粘着テープはその固定に必要です。準備しておいて損はありません。
最強の家庭用品:食品用ラップの活用例
食品用ラップは、防災グッズとして入れておくべき家庭用品の中でも最も用途が広く、使い勝手もよいものです。すぐに思いつく活用方法だけでも以下のようなものがあります。
1. コップや食器の上にラップをかぶせて使う。
洗う必要がなくなり水の節約になる。
2. 小寄りのようにより合わせてひも状にする。
更に三つ編みにすればロープ代わりにすることも可能。
3. 包帯代わりにする。
添え木をすれば、骨折箇所の固定できる。
4. 防寒対策できる。
足先はアルミホイル、胴体は新聞紙を巻き、ラップで固定すると温かい。
5. 防水対策できる。
水に浸かると困る電化製品などを保護できる。
6. ゴミや汚物の防臭ができる。
7. 広げて窓や壁に貼り付け油性ペンで文字を書くことで伝言板代わりになる。

あると便利な家庭用品:アルミホイルの活用例
アルミホイルには簡単に形を変えられること、電気を通すこと、熱を反射すること、水分や気体を遮断することなど、さまざまな特徴があります。それらの特徴を活かせば、以下のように使用することも可能です。
1. 手で折ったり丸めたりして簡易食器やスプーンにする。
2. 金網などの上に広げて調理器具にする。
縁を作れば鍋のようにもなる。
3. つま先に巻いて防寒対策する。
4. 包んで密閉してゴミ等の臭いを遮断。
5. 光を反射させて明るくする。

サイズ違いを用意しておきたい家庭用品:ポリ袋の活用例
ポリ袋の利点は防水性能です。ゴミ袋として使用する大きいサイズのものだけでなく、食品保存用の袋や持ち手付きのレジ袋などサイズ違いのものを複数用意しておくと幅広く使えます。特に、湯煎可能なものや防臭機能のあるものは、防災グッズとして役立ちます。主な活用例は以下の通りです。
1. 新聞紙と組み合わせて簡易トイレにする。
便座に大判のゴミ袋を二重にして広げ、その中に新聞紙を詰めることで簡易トイレが完成。使用後は防臭スプレーをかけ、袋の口を閉じる。
2. 大判のゴミ袋はレインコート代わりにも使える。
ハサミで頭を出す穴を作ればポンチョに、2枚組み合わせればレインコートになる。
3. 段ボール箱と組み合わせてバケツ代わりに。
段ボール箱の中に大判のゴミ袋やレジ袋を入れると水を運ぶのに便利。紙袋との組み合わせも可能。
4. 湯煎できるポリ袋で調理。
5. 持ち手付きポリ袋は骨折時の三角巾代わりになる。
6. 手袋や足の保温にも使える。
結論:効果的な防災は身近なところから
災害対策が必要なことはわかっていても、なかなか実行できないという中小企業が多いのではないでしょうか。無理して特殊なものを準備しようとする必要はありません。まずは従業員の協力を得られるようにすることが大事です。そのうえで、身近な家庭用品を上手に活用しましょう。身近なところから始めることが効果的な防災へとつながります。