床は、建物の用途やそこで行われる活動によって、求められる性能が大きく異なります。たとえば、工場の床には重量物の落下や移動に耐える強度が必要です。病院の床には衛生面への配慮が欠かせません。このような幅広いニーズに対応できる床仕上げ工法の1つとして、近年注目を集めているのが「塗床工事」です。この記事では、塗床工事の施工手順について解説します。
塗床工事とは、コンクリートやモルタルで造られた床面に、専用の塗料を塗布して仕上げる工事のことです。皆さんが普段歩いている床の多くは、コンクリートの上に何かしらの仕上げ材が施されています。オフィスビルやマンションのエントランスで見かけることの多いタイルやカーペット、フローリングなどもその一例です。
その点、塗床工事はこれらの仕上げ材とは異なります。床面に塗布した液体状の塗料を硬化させて仕上げる工法です。塗床工事で使用する塗料は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂など、さまざまな種類があります。それぞれに特性があり、目的や用途、環境に合わせて最適な塗料を選択します。
たとえば、工場の床には耐薬品性や耐摩耗性に優れたエポキシ樹脂系の塗料を使用することが多いです。病院の床には抗菌性や防汚性に優れたウレタン樹脂系の塗料が適しています。
塗床工事は、ただ塗料を塗るだけの単純作業ではありません。美しい仕上がりと耐久性を両立させるためには、いくつかの工程を丁寧に行うことが必要です。ここでは、一般的な塗床工事の施工手順を詳しく解説していきます。
塗床工事は、お客様の要望を正確に把握するところから始まります。そのためは、施工前にヒアリングを行い、以下の項目などについて、細かい部分まで丁寧に確認することが欠かせません。
①塗床工事の目的
耐久性の向上、耐薬品性の向上、美観の向上など、お客様が何のために塗床工事をしようとしているのか、目的を聞き出します。
工場、倉庫、病院、店舗など、どのような場所で使用するのかを確認します。
人の歩行が多いのか、重量物の移動があるのか、薬品を使用するのかなど、床はどのように使用するのかを聞き出します。
色、模様、光沢など、どのような仕上がりにしたいのか、お客様の要望を聞きます。
いくらくらい塗床工事にかけることができるか、予算を確認します。
これらは最適な塗料の種類や工法、施工期間などを決定するために欠かせない情報です。お客様と綿密なコミュニケーションをとることが、満足度の高い塗床工事につながります。
十分にヒアリングをしたら施工を開始します。最初に、施工箇所の周辺に機器や家具などを移動しますが、移動が難しいものは、塗料が付着しないように、ビニールシートや養生テープなどで覆って保護しなければなりません。
施工箇所周辺の壁や天井なども、塗料の飛散を防ぐために養生します。塗料の飛散は、周囲を汚すだけでなく、仕上がりの美観にも影響するので、養生は隙間なく、丁寧に 行うことが重要です。
下地処理は、塗床工事において最も重要な作業と言っても過言ではありません。下地処理の良し悪しが、塗料の密着性や耐久性、仕上がりの美観に大きく影響するからです。
まずは、床面に付着しているゴミ、ホコリ、油分などを除去したら、床面にひび割れや欠損などがないかをチェックします。小さなひび割れであれば、エポキシ樹脂系の補修材などで補修できますが、大きな欠損や段差がある場合は、モルタルなどで平滑に修正しなければなりません。
さらに、コンクリートの表面が劣化している場合は、グラインダーやショットブラストなどを用いて、劣化した部分を削り取る作業が必要です。下地処理をしっかり行うことによって、塗料の密着性を高めることができます。下地処理は地味で手間のかかる作業ですが、塗床工事の成功を左右する重要な工程です。
下地処理が完了したら、下塗り材を塗布します。下塗りは、ローラーや刷毛などを用いて下塗り材を均一に塗布していく作業です。塗布量は、塗料の種類や床の状態によって異なりますが、薄すぎると密着性が低下し、厚すぎると乾燥不良やひび割れの原因となります。そのため、適切な量を塗布することが重要です。
下塗り材が乾燥したら、中塗り材を塗布します。中塗り材の主な役割は、塗膜の厚みの確保と耐久性の向上ですが、中塗り材によって床の色や模様を調整することも可能です。下塗り材と同じように、ローラーや刷毛などを用いて均一に塗布していきます。適切な量を塗布することが重要な点も下塗りと同様です。
中塗り材が乾燥したら、仕上げの上塗り材を塗布します。上塗り材の役割は、床面の美観や機能性の向上です。上塗り材には、さまざまな種類があります。一例を挙げるなら、光沢のある仕上げ材、滑り止め効果のある仕上げ材、耐薬品性に優れた仕上げ材などです。用途に合わせて最適なものを選択します。上塗り材を塗るときに用いるのも、ローラーや刷毛などです。ムラや塗り残しがないように、注意深く作業を進めます。
上塗り材が完全に乾燥したら、塗床工事は完了です。必要に応じて、仕上げ材を塗布して、塗膜を保護したり、美観をさらに向上させたりすることもあります。仕上げ材としてよく用いられるのは、ワックスやコーティング剤などです。仕上げ材を塗布することで、塗膜の耐久性を高めたり、汚れや傷から保護したりすることができます。
塗床工事が済んでも、塗料が完全に硬化するまでには、床に重いものを置いたり、歩行したりしないように注意が必要です。塗料の硬化には数日かかる場合もあります。
このように複数の工程を経て完成する塗床工事は、それぞれの工程を丁寧に 行うことが大切です。各工程を大事にすることで、美しく、耐久性の高い床面を実現することができます。
ガスや工具等を以前から購入していただいているユーザー様です。工場改修のご提案をしている中で、床の補修を検討しているとの情報を受け、塗床工事をご提案させていただきました。
機械整備はもちろんのこと、小型重機から大型重機まで整備している工場です。工場内に車輌が出入りすることが多く、コンクリート生地にクラックや穴など、欠損が多数見られました。
整備をする際に車両を上げる油圧ジャッキも、床が平坦でないため、できるだけ欠損の無い場所へ設置し、作業性を改善したいという要望もおありです。
また、機械油を使用していることにより、床自体に油が染み込んでいるため、一般的な塗料では剥がれやすいことに困っているようでした。
そこで、『密着に特化した塗料』として有名な染めQテクノロジィ様の塗料をおすすめした次第です。
今までに機械設備や作業工具等を弊社にて導入していただいた、長年お付き合いしているお客様です。今回も、機械をリプレイスすることとなり、既存の機械が設置してある場所に移して据え置く予定でした。
しかし、床の劣化や切削油のこびり付きが酷く、他の場所への設置も難しいということでお困りだったようです。そのような中、以前弊社が提案した床の施工を覚えてくださっており、お声がけいただきました。
元々大型機械が多く据え付けられていた場所です。機械を留めていたアンカー痕や鋼材を置いた際に出来た床の傷、切削油がこびり付いてしまった箇所など、問題点が数多くありました。
にもかかあわらず、機械導入日程を考えると、床塗装の工期は2日間で行うしかありません。全ての問題点を解決するために、塗料メーカーと現地調査を実施し、床の状態を見極めたうえで、床塗装のご提案をすることになりました。
静岡スマートファクトリー.comを運営する富士酸素工業株式会社では、静岡県を中心に工場のさまざまな問題についてご相談を承っています。
今回ご紹介しました塗床工事以外にも、工場関連機器のお悩みもお伺いいたします。
静岡県内で、工場について何かお困りのことがあれば、静岡スマートファクトリー.comを運営する富士酸素工業株式会社まで、ぜひ一度お気軽にご相談ください。