「自動溶接」とはJISの定義によると、「操作者が常時操作しなくても連続的に溶接が進行する装置を用いて行う溶接の総称」とされています。
これまで長らく溶接は手作業で行われてきたもので、現在も現場では手作業によって多くの溶接が行われています。しかし近年、生産工程の自動化を図るシステムの総称を意味する「ファクトリーオートメーション=FA」の考えが浸透するようになり、製造工程の自動化が推し進められるようになりました。
一般的に手溶接と言った場合、被覆剤(フラックス)を塗布した被覆アーク溶接棒(手溶接棒)を用い、溶接棒と母材に電流を流してアークを発生させて、その熱によって溶接する溶接法のことを指します。
しかし手溶接は、溶着効率が低いことがデメリットの一つでした。このデメリットを解消するために生み出されたものが、半自動アーク溶接です。
手溶接では被覆アーク溶接棒をその都度交換しなければなりませんでしたが、この作業を省くため、溶接材として長いワイヤーを用いたものが半自動溶接と呼ばれるようになりました。かつては「溶接」といえば手溶接を指していましたが、現在ではこの半自動溶接のことを指すほど一般的な溶接方法となったのです。
このように、手溶接のデメリットの一つを補うことができた半自動溶接でしたが、「作業を行う人によって品質が異なる」というデメリットまでを補うことはできませんでした。そこで生まれたものが自動溶接です。自動溶接には自動溶接機による「自動溶接」と、ロボットが溶接を行う「ロボット溶接」があります。
自動溶接とロボット溶接の違いは、自動溶接は溶接作業を工場のラインなどで連続的に行う方法で、ロボットによりより高度な溶接を自動で行えるようにした方法がロボット溶接です。
自動溶接には以下のような欠点がありました。
このような制限を解決したものが、ロボット溶接ということなのです。
手溶接、半自動溶接、自動溶接のメリットとデメリットをまとめると以下のようになります。
メリット | デメリット | |
手溶接 | ・溶接設備が小型かつ安価なので導入しやすい ・フラックスが溶けることによって生じるガスやスラグによるシールド効果を得やすい ・素材や構造によらず溶接が可能 | ・スラグを除去しなければならず、溶着効率が低い ・多量のヒューム(※1)が発生する ・作業者の技量によって品質に差が出る |
半自動溶接 | ・手溶接よりも効率が高く、溶接材の交換なく長時間作業できる ・溶接スピードが速く、溶接後のスラックスやスパッタの除去作業も省略できる | ・フラックスの代わりにシールドガスを用いるため、原則風のない屋内で作業する必要がある ・作業者の技量によって品質に差が出る |
自動溶接 | ・安全に影響があるヒュームやスパッタの発生が少ない ・風の影響を殆ど受けない ・作業者の技量によって品質に差が出ない | ・溶接面の形状が限られる ・溶接の姿勢が限られる ・シーケンス制御、機構の設計安全管理など今までと異なる技能が必要である |
※1ヒューム:溶接の際に発生した金属蒸気が凝集した粒子
一般的に、溶接ロボットは大きく分けて3つの部分から成ります。
①マニピュレーター マニピュレーターは溶接ロボットの本体のことで、先端に付いている溶接トーチを取り替えることで、さまざまな溶接に対応できます。
②コントローラー コントローラはマニピュレーターを動かす制御部分です。プログラミングペンダントで読み込んだデータを記憶するコンピュータ部、マニピュレーターとの通信をするインターフェース回路などで構成されています。
③プログラミングペンダント マニピュレーターに動きを覚えさせる装置です。マニピュレーターの動作データの新規作成や変更、修正などができます。
自動溶接には、手溶接や半自動溶接とは違いティーチングという工程が必要となってきます。ティーチングとは、産業用ロボットに一連の動きを教え込む作業のことで、オンラインティーチングとオフラインティーチングの2種類があります。
オンラインティーチングとは、ティーチングペンダントというリモコンを使い、ロボットを実際に動かしながら稼働の様子を記録して、その動作をもとに再生や確認を行うものです。 オンラインティーチングは、手軽かつ確実に実施しやすいことから以前は一般的な手法でしたが、ティーチングの実施中は工場のライン自体をストップする必要があり、その損失が懸念され採用機会は減少しました。
そんなオンラインティーチングに代わり導入され始めたのが、オフラインティーチングです。オフラインティーチングでは、生産ラインの停止を避けるためロボットを使わずにティーチングを行えるようにしました。 しかしオフラインティーチングでは3DCADデータを用いたりプログラムを直接打ち込んだりしなければならないため、作業者がCADやプログラミングについてある程度理解していなければなりません。
産業用ロボットを取り扱う作業には危険も伴い、十分な知識や技術を特別教育で習得したことを証明する資格の取得が法律で義務付けられています。
特別教育で学ぶべき項目も、法律で定められています。特別教育を実施する機関を選択する際、法令に則った教育が受けられることが最も重要な確認項目です。
特別教育の内容は「教示」と「検査」に分かれており、担当する作業によって受講する内容が異なるため、自分の担当作業に対応した特別教育を受講する必要があります。受講を促す責任者はその点を踏まえ、適切な教育を受けられるよう配慮が必要です。
「教示」とはティーチング作業を指します。具体的には、マニピュレータの動く順序や位置、速度の設定だけでなく、すべての動作の確認を行うことです。
この作業は産業用ロボットに近づいて行うことが多く、作業員とロボットとの接触事故が起こりやすい場面です。教示作業を安全に行うため、担当作業員は必ず上記の特別教育を受け、資格を取得することが義務付けられています。
科目 | 範囲 | 時間 | |
学科 | 産業用ロボットに関する知識 | 産業用ロボットの種類、 各部の機能および取り扱いの方法 | 2時間以上 |
学科 | 産業用ロボットの教示等の作業に関する知識 | 教示等の作業の方法 教示等の作業の危険性 関連する機械等との連動の方法 | 4時間以上 |
学科 | 関係法令 | 法、令及び安衛則中の関係条項 | 1時間以上 |
実技 | 産業用ロボットの操作の方法 | ー | 1時間以上 |
実技 | 産業用ロボットの教示等の操作の方法 | ー | 2時間以上 |
特別教育を受講できる場所は全国各地にあり、各都道府県の労働基準協会連合会やJISHA(中央労働災害防止協会)で特別教育の講座が定期的に開講されています。開催元によって講座内容が大きく変わることはありませんが、法律で定められた科目と所要時間を満たしているかどうか確認が必要です。また、特別教育の講座を実施している産業用ロボットのメーカーもあります。導入するメーカーが決まっている場合、そのメーカーが主催する特別教育を受けると作業内容の理解が容易になることがあります。
「検査」とは、修理や調整、そしてそれらに伴う結果の確認を行うことです。検査を行う際には、産業用ロボットを停止して行うことが安全衛生規則第150条にて原則として定められています。しかし状況によっては稼働したまま検査することもあるため、教示作業を行う作業員だけでなく、検査作業に携わる作業員も特別教育を行わなければならないとされています。
科目 | 範囲 | 時間 | |
---|---|---|---|
学科 | 産業用ロボットに 関する知識 | 産業用ロボットの種類、制御方式、 駆動方式、各部の構造及び機能並びに 取り扱いの方法 制御部品の種類及び特性 | 4時間以上 |
産業用ロボットの 検査等の作業に関する知識 | 検査等の作業の方法 検査等の作業の危険性 関連する機械等との連動の方法 | 4時間以上 | |
関係法令 | 法、令及び安衛則中の関係条項 | 1時間以上 | |
実技 | 産業用ロボットの 操作の方法 | ー | 1時間以上 |
産業用ロボットの 検査等の操作の方法 | ー | 3時間以上 |
特別教育を受講できる場所は全国各地にあり、各都道府県の労働基準協会連合会やJISHA(中央労働災害防止協会)で特別教育の講座が定期的に開講されています。開催元によって講座内容が大きく変わることはありませんが、法律で定められた科目と所要時間を満たしているかどうか確認が必要です。また、特別教育の講座を実施している産業用ロボットのメーカーもあります。導入するメーカーが決まっている場合、そのメーカーが主催する特別教育を受けると作業内容の理解が容易になることがあります。
オンラインティーチングでは、実際にロボットを動かして溶接を行い、その動作をセンサによって検知します。センサが検知した動作をプログラムとして記憶し、記憶した動作を再生(ティーチングプレイバック)することで、ロボットによる溶接を実現します。
また、ロボット溶接の工程においては、非接触センサをロボットの目として用い、溶接線の倣い制御や開先形状の測定を行うことで、より高精度な自動溶接が可能となります。
ラインで運ばれてきた母材に、電極やトーチの先端に取り付けたプローブやワイヤを接触させて溶接位置を検知する方法です。接触式センサには、「接触プローブセンサ」と「ワイヤタッチセンサ」があります。
接触プローブセンサは、トーチと一体で動作するプローブを開先に当て、プローブが溶接線に追従することで溶接個所を検出します。
ワイヤタッチセンサは、溶加材であるワイヤに微弱な電流を流して母材に接触させ、相互の位置を検出します。開先角度や開先開口幅がばらついている場合、点で接触するセンシングを繰り返すため、検出に時間がかかってしまうことが問題点として挙げられます。
ロボット溶接の非接触式センサとしては、主に「アークセンサ」や「レーザー変位計」が利用されます。
「アークセンサ」は、消耗電極式のアーク溶接において開先内でウィービングしながら溶接する際の溶接電流や、アーク電圧の変化に応じたトーチ位置の制御などに用いられます。比較的安価に溶接が可能ですが、材料によっては倣い制御に対応しないものもあります。また、一般的に開先形状の検出といった用途には対応できません。
一方、「レーザー変位計」は、レーザー光と光センサを利用した変位計で、他のセンサに比べより多くの情報を高速に検出・出力できます。そのため、スピーディに溶接線の倣い制御ができることや、開先形状を測定しリアルタイムで制御に反映できるなど、自動溶接の精度向上や工程のタクトアップといったメリットがあります。
溶接の接合方法には、融接、圧接、ろう接の3種類があります。 まず、融接とは溶接の中でもとりわけ一般的な溶接法で、被溶接材料(母材)の溶接部を加熱して、被溶接材料同士を融合させて溶融金属を作り、冷却とともに凝固させて接合するというものです。 融接に分類される溶接法の中でもアーク溶接が代表的です。
アーク溶接は、アーク放電という気体中に生じる放電現象を利用した溶接方法です。溶接で使用するアークは、高いものでは中心部で約16,000℃、外周部で約10,000℃あると言われていて、これは太陽の表面温度を超える温度です。あらゆる母材を溶融させるのに、十分な熱量があることがわかります。
アーク溶接の主な用途には、
などが挙げられます。
圧接は、金属などの被溶接材料の接合部に、機械的圧力を加えて接合する加工法です。機械的圧力とは、文字通り機械によって加える圧力のことで、数値制御が可能なためFA=ファクトリーオートメーションで広く用いられています。
圧接は薄板の溶接によく使用されます。しかし、強度が必要な厚板には対応できません。また、電極に棒状のものを使用した場合にはスポットでしか溶接できないため、気密性が必要な場合には不向きです。電極に円盤を使用したシーム溶接は気密性のある溶接ができる反面、装置が大掛かりで大きな電源が必要です。
圧接の中でも代表的なスポット溶接は、溶接する金属母材の上下から電極をあて大電流を流し加熱し、冷却、母材を再凝固して2つの母材を溶接する圧接法です。スポット溶接は仕上がりが美しいことも特徴であるため、用途として
に使用されています。
ろう接は、2枚の板の間に融点の低いろう材を流し込む溶接法で、母材を溶かさないため異なる母材を溶接することができるという特徴があります。ろう付けは高い気密性や水密性などが求められる接合部に向いているため、
などに使用されています。
世界の三大ウェルディングショーのひとつとして、溶接・接合技術ならびに関連分野における最新の製品と先端溶接加工システム技術を一堂に結集し、商取引や技術習得、内外交流の場として活用するわが国最大の溶接・接合展示会。
次回開催予定:2020年度開催は中止が決定
※引用元:https://weldingshow.jp/2020/
国際ロボット展は、1974年に初開催し、以降2年に一度の開催で、今回で23回目を迎えます。前回(2017年)の出展者数は612社・団体、出展小間数は2,775小間の過去最大規模となり、海外出展者は14カ国、88社・団体に増加しています。総来場者数は13万人を超え、82カ国から約1万人の海外来場者が訪れる“世界最大規模のロボット専門展”として注目を集めています。
次回開催予定:2021年12月1日(水)~4日(土)@東京ビッグサイト
※引用元:https://biz.nikkan.co.jp/eve/irex/
スマートグリッド/VPPなど、次世代電力システムに関する国際商談展です。
スマートグリッド構築に必要なあらゆる製品・技術が一堂に出展し、電力会社・アグリゲーター・ハウスメーカー/ゼネコン・需要家が来場。9月にインテックス大阪、3月に東京ビッグサイトで開催します。
次回開催予定:2020年9月9日 (水)- 11日 (金)@インテックス大阪
※引用元:https://www.smartgridexpo.jp/ja-jp/about.html
日本から世界へ発信する塑性加工技術の専門展示会です。専門展ならではの質の高い来場者を数多く動員し、多くの商談を創出するだけでなく、セミナー・講演会など最新の塑性加工技術情報を発信します。
次回開催予定;MF-TOKYO2021は中止が決定
※引用元:https://www.mf-tokyo.jp/j/overview.html
ものづくり補助金とは、新しいものづくり(試作品開発・生産など)やサービスの開発に挑戦する中小企業と小規模事業者を支援するために交付される、中小企業庁が実施する補助金です。
予算も多く1件当たりの金額がそれほど高額ではないので、採択される数も多いのがこの補助金の特長です。設備投資や設備開発を行う中小企業や小規模事業者は、この補助金の申請を検討することをお勧めします。
ものづくり補助金を受給するためには、以下のいずれかを満たす必要があります(※ただし、実施年度によって異なりますので、必ず応募要項を確認するようにして下さい)。
認定支援機関の全面バックアップを得た事業を行う中小企業・小規模事業者等であり、以下の要件のいずれかに取り組むものであること・「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示された方法で行う革新的なサービスの創出・サービス提供プロセスの改善であり、3~5年で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画であること。
または
「中小ものづくり高度化法」に基づく特定ものづくり基盤技術を活用した革新的な試作品開発・清算プロセスの改善であり、3~5年で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画であること。
申請する補助金事業が決まったら、募集時期や書類提出時期に合わせて計画を立てます。しかし、事業計画書や申請書類が通っても、受給が確定したわけではありません。実際に補助金の支払いが確定するのは、事業の実績報告の審査後であるため、それを念頭に置いた上での計画が必要になります。
事前審査では、申請書の作成が最も重要です。申請が初めての場合、検査項目をしっかり確認し、漏れのないよう正確に記入しましょう。
事業計画を書くときのポイントは、事業をひとつのストーリーとして組み立てることです。自社や業界が抱えている課題を明確化し、ロボットの導入でどのように課題を解決できるのかを、具体的な数字や方法を挙げながら記入すると効果的です。
さらに、他社との違いや自社独自の強み、事業の継続性などの説明を補うことで、より説得力を持たせることができます。
また、「読みやすさ」も意識して書類を作成するとなお良いです。審査員が業界や申請企業について詳しくない可能性もあるため、誰からも読みやすく分かりやすい書類であれば、印象もなります。
はじめて書類作成をされる方にとっては書類作成は、ロボット導入を支援するコンサルティング会社に相談すると安心です。補助金の申請には長い準備期間や多くの手続きが必要です。しかし、補助金を受けてロボットを導入できれば、よりよい職場環境の実現や、さらなる事業発展につなげられるチャンスとなります。
自動溶接・ロボット溶接について、以下の内容のサービスを提供しております。
富士宮市 自動車部品メーカーのお客様です。以前、弊社が納品させていただいた溶接ロボットがありましたが、一般的な更新目安が10~15年であるのに対し、使用頻度が高かったこともあり9年目に更新を検討されていました。作業性の向上等のご要望があり、今回もご相談をいただきました。導入後は、デジタル電源によるアークの安定とスパッタの低減等の効果があり、作業者の負担軽減につながりました。