ポータブル電源の選び方:オフィスでも使える家庭用モデル

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万が一の災害に備えて準備しておきたいものの1つにポータブル電源があります。私たちは、思っている以上に電気に頼った生活をしているからです。特に、パソコンや電話など、電気がストップすると使えなくなるものが多いオフィスでは、災害時の電源確保が重要な課題となります。そこで、オフィスへの備蓄におすすめするポータブル電源の特徴や、維持管理の方法、防災時の効果的な使用方法などについて解説します。


1.      ポータブル電源の基礎知識

ポータブル電源とは、充放電機能を本体に搭載した持ち運び可能な大容量バッテリーのことです。同じような機能を持つものに「モバイルバッテリー」がありますが、両者は本体のサイズや容量によって区別されています。

日常的に持ち運ぶことを前提としているモバイルバッテリーは手のひらサイズで、重量も200〜300gのものが主流です。それに対して、移動させた後据え置くことを前提としているポータブル電源のサイズは縦・横・奥行が30㎝前後。重量は10㎏前後の小型タイプから20㎏を超える大容量タイプまで幅があります。防災用として備蓄するのであれば、動かしたい電化製品の消費電力と使用時間から必要な容量を計算して選ぶようにします。


2.      オフィスでの使用シーンと必要な性能

オフィスでポータブル電源を使用するシーンとしては、次のようなものが考えられます。

  • 緊急事態が発生した際の電源確保
  • コンセントが少ない会議室でのプレゼン
  • 屋外でのイベント

どのようなシーンで使用するかによって、重視する機能が変わります。緊急時の電源として使用するなら、複数台のスマートフォンを同時に充電したり、複数の電化製品を同時に使用したりするために、ACコンセントの数や出力ポートの種類・数が重要なポイントです。頻繁に持ち運ぶのであれば、重量がポイントになりますし、屋外での使用が多いのであれば、防水や防塵も重要視されるでしょう。


3.      おすすめの家庭用ポータブル電源モデル

家庭用のポータブル電源は、種類が多く価格もお手頃です。しかし、物によって容量や定格出力の幅が大きいのでしっかり選ばなければなりません。オフィスの場合、複数の機器に長時間安定した電力を供給することが求められます。夏場や冬場は、扇風機や暖房器具などへの電力供給も必要になるかもしれません。十分な容量、定格出力のポータブル電源を準備するようにしましょう。

オフィス用に備えるなら、容量は1,200Wh、定格出力は1,300W以上が目安です。容量1,200Whというのは、電気が復旧するまで平均3日間かかるとして、その間一般家庭が生活することを想定した容量です。一方、定格出力1,300Wあれば、消費電力の多い季節家電や調理家電も動かせます。

緊急時のオフィス用電源として家庭用のポータブル電源を選ぶ際には、以下のポイントを重視して選ぶとよいでしょう。

・ACコンセントが2個以上

通常タイプのコンセントが2個以上あれば、複数の電化製品を同時に使用することができます。

・出力ポートの種類と数が豊富

USBはType-Aが2個、Type-Cが2個以上あると、複数のスマートフォンを同時に充電しながら、USBランタンなどの照明器具も使えます。

・カーチャージ・ソーラーパネル充電ができる

災害時向けに購入するなら、カーチャージやソーラーパネル充電ができるポータブル電源がおすすめです。購入時にソーラーパネルもセットで購入しておくとよいでしょう。電気の復旧まで時間がかかっても、車のシガーソケットやソーラーパネルから給電できます。

・パススルー機能がある

パススルー機能とは、ポータブル電源を充電しつつ電化製品にも電気を送れる機能のことです。パススルー機能がない電源の場合、充電中は使用できません。パススルー機能があれば、充電が減ってきたとき、車のシガーソケットやソーラーパネルから再充電しながら、給電も行えます。

・ワイヤレス充電機能がある

ワイヤレス充電機能は無くてもそれほど困りませんが、あればスマートフォンをワイヤレスで充電しながら、USBポートを他の電化製品の充電に使うことが可能です。

・安全性の高いリン酸鉄リチウム電池をつかっているもの

ポータブル電源に用いられるリチウム電池には、三元系リチウム電池とリン酸鉄リチウム電池の2種類があります。三元系リチウム電池は、温度が上昇すると発火しやすく、放電もしやすいので、繰り返し使える回数が少なく寿命が短い点が問題です。

一方、リン酸鉄リチウム電池は、発火の危険性が低く、長時間使わなくてもあまり放電しないので、備蓄用の電源としても向いています。三元系リチウム電池は繰り返し充電できる回数が500〜1500回なのに対して、リン酸鉄リチウム電池は2000〜4000回と長寿命な点もおすすめです。


4.      維持管理と定期チェックの方法

ポータブル電源は満充電していても、使わず置いている間に少しずつ放電しています。そのため、定期的な点検やメンテナンスを怠ると、次のような問題が発生しかねません。

  • バッテリー容量が急激に減り、稼働時間が短くなる
  • 内部の回路が劣化し、充電がうまくいかなくなったり突然給電できなくなったりする
  • 長期間にわたり放電した結果、バッテリー本体の膨張、発火、液漏れのリスクが高まる

このようなトラブルを防ぐためだけでなく、高価なポータブル電源の性能をできるだけ長く維持するためにも、定期的なチェックと正しいメンテナンスが重要です。基本的なメンテナンスの項目は以下の通りです。

・適切な充電と放電の管理をする

充電が100%になったら速やかに充電を停止することが大事です。そのまま充電し続けると過充電でバッテリーが高温になり劣化しやすくなります。また、0%まで使い切る前に充電することもバッテリーを長持ちさせるためには必要です。長期間使用しない場合でも、少なくとも2〜3カ月に一度は50%以上になるまで充電するようにしましょう。

・保管時のバッテリー残量を適正に維持する

ポータブル電源を長期間保管する際には、バッテリー残量を60〜80%にして保管します。長期保管においては、満充電も完全放電もバッテリーの劣化につながるため、避けなくてはいけません。

特に、0%で長期間保管すると、再充電できなくなることがあるので注意が必要です。バッテリーは使わなくても保管している間に自然放電するので、定期的に確認し、必要に応じて充電することが大事です。

・保管場所の状態に注意する

ポータブル電源は、箱に入れず、風通しの良い直射日光の当たらない場所に保管しましょう。保管場所が高温多湿になると、バッテリーが劣化し、寿命が短くなります。

・定期的に使用して動作を確認する

ポータブル電源は、長期間使わずに置いておくと、バッテリーが劣化してしまい、いざというときに十分な性能を発揮できないかもしれません。少なくとも半年に一度は、充電と給電が正常にできるか確認するようにしましょう。

・端子やケーブルなどを掃除する

端子やケーブルが汚れていたり錆びていたりしていると、接触不良や故障の原因になります。乾いた柔らかい布を使って、定期的に掃除しましょう。

この他、ファームウェア搭載のものは定期的な動作確認とアップデートも必要です。


5.      災害時の効果的な使用方法

災害時にポータブル電源を効果的に使用するためには、事前に使い方を計画しておく必要があります。使用する電化製品の消費電力を調べて、ポータブル電源の容量に合うように優先度の高い方から割り当てていきましょう。使用時間を細かく管理すれば、電力消費を最低限に抑えることができ、電力を長時間維持することができます。また、パススルー機能が付いているものでも、できるだけ充電しながらの使用は避けることも大切です。充電しながらの使用はバッテリーに負担をかけ、寿命を縮めてしまいます。


6.      まとめ:備えあれば憂いなし

オフィスにポータブル電源を備蓄しておけば、災害時に電力供給がストップしても必要最低限の作業を行うことができます。ただし、十分な容量のあるポータブル電源は重量も20㎏前後とかなり重いため、一人で移動させるのは大変です。いざというときに、すぐに取り出して運べる場所に保管しておくようにしましょう。