非常食の備蓄:家庭用品をオフィスで活用するコツ

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非常食の備蓄が必要なのは家庭だけだと思いがちですが、実はオフィスにおいても非常食の備蓄はとても重要です。オフィスでの仕事中に災害が発生し、交通インフラが被災して帰宅できなくなる可能性もあるからです。

場合によっては、従業員の安全確保や事業継続のために、オフィス内に従業員を留まらせる必要があるかもしれません。そこで、今回は、家庭でも備蓄するような普段からなじみのある食品をオフィスの非常食として備蓄するコツについて解説します。


1.      オフィスでの非常食備蓄の重要性

オフィスにおいて、非常食の備蓄は、従業員の安全確保と事業継続のために必要不可欠なものです。災害時に、従業員が安心して過ごせる環境を整えることは、企業としての信頼度を高めることにもつながります。

内閣府が、企業によるBCP策定と、防災備蓄を行うことを推奨しているのをご存じでしょうか。BCPとは、Business Continuity Planの略で、「事業継続計画」のことをいいます。BCPは、自然災害やテロ、システム障害などの緊急事態が発生しても、業務を継続し、早期に復旧できるようにするための計画です。その計画の中には、非常食の備蓄も含まれています。

また、東京都では「帰宅困難者対策条例」で、従業員が施設内に3日間留まることができるだけの飲料水と食料を備蓄することを事業者の努力義務としています。地域によって想定される災害や被害は異なりますが、オフィスでは従業員数×3日分を目安とした非常食の備蓄が必要だと考えるべきでしょう。


2.      家庭用非常食の種類と特徴

家庭では、長期間保存できる食品を、飲料水と共に災害時の非常食として確保しておくことが大切です。家庭用非常食の種類としては、アルファ化米、レトルト食品、缶詰、乾パン、長期保存が可能な保存パン、ビスケットなどがあります。近年では、エナジーバーやゼリー飲料なども非常食として人気です。お菓子や嗜好品なども一緒にストックしておくと、非常時のストレス軽減やリフレッシュに役立ちます。

長期保存が可能という点を重視するのはもちろんですが、災害時に食べることを想定しているので、調理不要または災害時でも調理が簡単にできるという点も重視しなければなりません。また、栄養バランスや家族の好みなども考えて選ぶ必要があります。たとえば、乾パンは長期保存でき、調理も不要ですが、高齢者や乳幼児には食べにくい非常食です。家族が安心して食べられるということも、家庭用非常食を選ぶ際には大事な視点になります。


3.      オフィスでの保管方法と注意点

オフィスで非常食を備蓄する際は、災害時に取り出しやすい場所に、取り出しやすい形で保管します。従業員が見つけやすい場所に置いて、災害時はすぐに取り出せるようにしておきましょう。避難敬老の近くに保管するのが理想です。棚やキャビネットを使って保管する際には、低い位置に置くようにします。災害時はエレベーターがストップして使えなくなる可能性があるため、エレベーターを使わなくても搬出できる場所に保管することも大事です。

また、1カ所に集中させてしまうと、被害の状況によっては取り出せなくなる可能性があります。何カ所かに分散して保管するようにしましょう。複数のフロアがあるオフィスであれば、各フロアにその階で働く従業員分を配置します。各従業員に1日分ずつ配布して、各自のデスクに保管しておいてもらうというのも1つの方法です。空いている部屋や倉庫があれば、ある程度まとめて備蓄して置いてもよいでしょう。

食料の備蓄では、直射日光や高温多湿を避けることも忘れてはいけません。冷暗所に保管し、定期的に点検して随時入れ替えも行いましょう。そうすることで一定の品質を維持できます。なお、保管場所を考える際には消防法に適合しているかどうかも考えなければなりません。災害に備えて、転倒防止対策や浸水対策も万全にしておきましょう。


4.      ローテーションのコツと賞味期限管理

家庭用の非常食を保管する場合は、ローリングストック法が推奨されています。ローリングストック法とは、日常生活で使う食料品や日用品を、普段から少し多めに買い置きするようにして、「使ったら買い足す」を繰り返すことで常に一定量の備蓄を維持する方法です。日常食をストックしておくことにより、災害時も非常用の特別な食品ではなく、普段から食べ慣れているものを安心して食べられる点がメリットとして挙げられます。

一方、オフィスで、効率的に非常食をローテーションし、賞味期限管理を行うコツは、以下の通りです。

・ローリングストック法を活用する

普段から食べ慣れているカップ麺やレトルト食品、缶詰、エナジーバーなどを少し多めに買い置きし、減ったら買い足すようにします。

・賞味期限を確認しやすくする

箱やラベルに賞味期限を記入し、外からでもわかるようにしておきます。備蓄の際は、古いものを先に取り出せるように、置き方を工夫しましょう。

・取り出しやすい場所に収納し定期的に状態や賞味期限をチェックする

取り出しやすい複数の場所に分散配置し、管理担当者を決めておきます。状態や賞味期限をチェックするタイミングは2ヶ月に1度など、あらかじめ決めておくようにしましょう。災害時に持ち出すことも想定して、台車を用意しておくことも大事です。

・賞味期限が近いものや切れたものは新しいものと入れ替える

賞味期限が近くなったものは、社内ランチで提供したり、従業員に配布したりすると、従業員の防災意識を高めるのに役立ちます。賞味期限が切れたものでも食べられるものは地域のフードバンクに寄付するとよいでしょう。企業としての社会貢献にもつながります。


5.      従業員の好みを考慮した選び方

オフィスでは、従業員の好みを考慮して非常食を選ぶようにすると、従業員に安心感を与え、非常時でも食事を楽しむことができます。ただし、従業員の好みを考慮しながらも、長期保存が可能で、栄養バランスの取れた食品を選ぶことも大事です。また、あらかじめ従業員のアレルギーについても把握しておき、災害時に対応できるようにしておく必要もあります。

従業員の好みを考慮した非常食選びのポイントは以下の7つです。

  • 従業員が普段から食べているものや好みの味を考慮して選ぶ
  • 組み合わせることで栄養バランスが取れるようにする
  • 長期保存が可能なもので十分に賞味期限があるものを選ぶ
  • アレルギーや苦手な食材に配慮する
  • 調理が簡単でゴミが出にくいものを選ぶ
  • 従業員の意見を聞きバラエティー豊かな食品を選ぶ
  • 大量にストックする前に試食してみる


6.      まとめ:日常と非常時をつなぐ備蓄計画

災害はいつ起こるかわかりません。日常からの備えが重要です。防災への備えは食料備蓄だけではなく、避難経路の確認や避難訓練なども並行して進める必要があります。企業の防災備蓄を漏れなく進めていくためには、一度防災士などの専門家からアドバイスを受けることも考えてみてはいかがでしょうか。防災備蓄を適切に管理できるようなシステムを導入することもおすすめです。