帰宅困難者対策の基本:オフィス滞在3日を想定した備蓄とルール
この記事は、地域密着で100年以上、ガスやリフォームに関することなら何でもお任せの富士酸素工業株式会社が監修するくらしのお役立ち情報です。
災害に備えて、企業にはさまざまな防災対策が求められています。その中の1つが「帰宅困難者対策」です。今回は、帰宅困難者対策にスポットを当て、その必要性と取り組み方について解説します。

1.なぜ帰宅困難者対策が必要か
企業に帰宅困難者対策が求められるのは、従業員の安全を確保しつつ二次災害を防止するため、安全配慮義務と社会的責任を果たすための2つの理由からです。
帰宅困難者とは、大規模な災害や事故が発生したことにより、帰宅手段を失った人のことです。地震や大火災などが発生すれば、鉄道やバスなどの公共交通機関が麻痺する可能性があります。主要道路に車が集中すれば、大渋滞も発生するでしょう。高速道路は二次災害防止のために、通行止めになるかもしれません。徒歩しか帰宅手段が無くなれば、帰宅困難者が街中にあふれることになります。
しかも、帰宅困難者は、これから帰宅しようとしている自社の従業員だけではありません。来客としてオフィスにいる人、外出中、出勤途中、帰宅途中の従業員すべてが帰宅困難者に該当します。企業数が多い都市部ほど、大規模災害が発生したときには、帰宅困難者が大量に発生することになるでしょう。
街中に帰宅困難者があふれ出せば、、二次災害のリスクも高まります。混雑した場所では将棋倒しが頻発し、多くの負傷者が出るかもしれません。群衆雪崩に巻き込まれれば、ケガだけでは済まず、命を落とすこともあり得ます。停電で真っ暗な中、余震が続けば、パニックになる人も出るでしょう。
将棋倒しが発生しなくても、徒歩で帰宅する人が増えれば、道に多くの人が滞留します。混雑によって交通渋滞が起きれば、救急車や消防車など緊急車両の通行を妨げ、救助活動に悪影響を及ぼすかもしれません。
企業が、災害発生時に従業員を一斉に帰宅させず、オフィス内に安全に留めおくことができれば、安全を確保しつつ二次災害を防ぐことにつながります。日頃から災害に備えた対策を強化しておけば、災害時にもうまく対応できるはずです。
各企業が帰宅困難者対策をしっかり行い、多くの徒歩帰宅者が道路上にあふれ出すことを防げれば、緊急車両の通行、救助、消火活動の妨げになる事態は避けられるでしょう。特に発災直後は無理に帰宅させず、安全な場所に待機させることが重要です。特に大都市圏では、条例で3日分の備蓄や安否確認手段の確保が企業に課されている地域もあります。

2.帰宅させるか待機させるかの判断基準
災害時において、企業がどのような帰宅支援基準を設定するかは、従業員の安全確保だけでなく、街中の混雑緩和の観点からも非常に重要です。内閣府のガイドラインなどを参照すると、主な判断基準は以下のようになっています。
①基本は3日間の待機
一斉帰宅は出来るだけ避けます。ただし、建物が危険な状態にある場合や家族の安否に懸念がある場合など、どうしても帰宅する必要がある場合は例外です。
②具体的な判断基準
具体的には、以下のような点を考慮して判断します。
- 建物の状態:倒壊や火災の恐れがないか。
- 帰宅経路の安全性:自宅までの経路が安全か。建物の倒壊や、地割れ、津波などの情報はないか。
- 帰宅手段の有無:公共交通機関が運行を再開しているか、幹線道路が徒歩通行可能か。
- 帰宅距離:徒歩で帰宅可能な距離か。
③ 帰宅支援の基本的な手順
帰宅支援の具体的な手順は以下の通りです。
- 待機指示:まずは一斉に帰宅しないように指示する。
- 安全確認:安全を確保したうえで水や食料などの備蓄品を配布する。
- 情報提供:安全な帰宅経路や交通機関に関する情報を収集し提供する。
- 段階的帰宅の実施:居住地が近い順、あるいは安全確認ができた順に帰宅させる。

3.必要量の考え方と備蓄のポイント
自治体の条例等では、企業における災害備蓄は、全従業員の3日分を確保することが目安となっています。具体的な備蓄量の目安は、1人当たり飲料水なら1日3リットル、簡易トイレは5回分です。その他にも、毛布やアルミブランケット、マスク、除菌用品、懐中電灯、救急用品などは備蓄しておく必要があるでしょう。アレルギーのある従業員に配慮したアレルギー対応食の確保も重要です。
発電機、ランタン、ラジオ、懐中電灯、メガホン、ヘルメット、工具セット、救急セットなどは、災害の初期段階で必要になります。すぐに持ち出せるように、初期対応用防災セットとしてまとめておくこともおすすめです。
なお、従業員の人数分ではなく、来客や夜勤者がいることを想定して、プラス10%を目安に備蓄しておくことが理想です。余分に備蓄して置くことで、周辺の帰宅困難者にも対応できます。
人数が多い企業では、必然的に分散保管になりますが、そうでない場合も、一カ所に集中保管することは避けましょう。浸水リスクのない高い階層や、複数の場所に分散して保管しておけば、使えなくなるリスクを抑えられます。
賞味期限、使用期限の確認、動作確認などのために、年1〜2回の定期点検が必要です。次の点検までに期限が切れることのないように、入れ替えを実施しましょう。
4. 企業の必須備蓄一覧 (1人3日分目安)
- 飲料水: 500mlペットボトル×6本×3日分=500mlペットボトル18本
- 食料: アルファ化米、クラッカー、乾パン、缶詰、レトルト食品など1日3食×3日分
- 簡易トイレ: 1日5回分×3日=15回分
- 衛生用品: ウェットティッシュ、トイレットペーパー、ティッシュ、マスク、消毒液、生理用品
- 防寒・睡眠用品: 毛布、アルミブランケット、使い捨てカイロ、寝袋
- 避難用品: ヘルメット、軍手、安全靴、ホイッスル
- 救急用品: 消毒液、包帯、絆創膏、常備薬、常備薬(救急セットとして準備)
- 電源・情報収集: モバイルバッテリー、ポータブル電源、乾電池、懐中電灯、LEDランタン、ラジオ、
- その他:バール、レンチ、ハンマーなどの工具、ビニール袋、筆記用具、名簿

5. 運用ルール
備蓄品はただ保管しているだけでは、いざという時に役に立たない可能性があります。あらかじめ、配布方法や保管場所、鍵の管理者、点検担当者などを決めておき、定期的に点検するようにしましょう。水や食料品、医薬品などの期限切れを防ぎ、ローリングストックできます。ラジオやモバイルバッテリーなども、定期的に動作確認すれば、すぐに使える状態を維持でき安心です。管理台帳に誰が、いつ、何を点検したかを記録し、一元管理できるようにしておけば、点検漏れを防げます。
保管のルールも統一しておきましょう。各階や倉庫など複数箇所に分けて保管し、全損リスクを避けるのはもちろん、段ボール箱表面の品目、賞味期限の記載方法、記載箇所、取り出しやすい置き方などを統一しておくことで、混乱を防げます。
災害発生後、速やかに備蓄品を従業員に配布できるような体制を作っておくことも大切です。備蓄品の管理者、配布責任者など責任者を定めて、明確にしておきましょう。

6. 周知と訓練
せっかく災害時のルールを作成しても、従業員に知られていないのでは意味がありません。避難場所や避難経路、安否確認の方法、連絡網などをマニュアルにまとめ、従業員全員に配布するか、社内ポータルに掲載して周知を図りましょう。
事業所が浸水・土砂災害区域内にある場合は、ハザードマップを活用し、具体的な避難方法を共有しておくことも必要です。備蓄品に関しても、備蓄場所と使用方法を全従業員に共有します。個別に準備してもらうものがあれば、その旨も伝えておくとよいでしょう。
防災訓練に関しては、法律上年1回以上実施が義務付けられています。避難訓練の他に、安否確認訓練や初期消火・救出訓練なども実施しましょ。経営陣や部門長は、BCP(事業継続計画)訓練もしておくようにします。訓練後には、アンケートやミーティングを実施し、マニュアルの問題点を発見、修正することも大切です。
まとめ
企業が帰宅困難者対策に取り組むことは、従業員の安全確保、二次災害防止のためだけでなく、社会的責任を果たすうえでも必要なことです。実際に災害が発生したときにも慌てずに対応できるよう、定期的に点検や訓練を実施し、備えておきましょう。

















